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塾長の独り言

八尾高校生を励ます

2013-02-10
 5月には府立八尾高校、7月には金光八尾中学校・高等学校、9月には浪速中学校・高等学校の先生方に、また12月25日には八尾高校の1・2年生の生徒諸君対象に、それぞれ1時間から3時間の講演をする機会に恵まれました。特に八尾高校の生徒諸君が寄せてくれました感想文を読んでいますと、感激の至りです。私が予想していた以上に『塾教育』の成果が出たのではないかと考えています。
 女の子は小学校の高学年から、男の子は中学生の頃から反抗期を迎え、中学生から高校生にかけては、家庭でも学校でも中々扱いにくい年頃になって来ます。反抗期そのものはだれもが経験する関所みたいなものですが、その時に親の気持ちや子供の気持ちを、あるいは学校の先生の考えや意図するところを相手に伝えられる『第三者』たる存在があれば、もっとスムーズに理解しあえ勉強にも打ち込めるのではないかと思います。
 今年の年賀状でも少し触れていましたが、家庭教育における子育てにおいて、昔はおじいちゃんおばあちゃんといった年寄りがいて、孫をなだめたりたしなめたり励ましたりし、一方親に対してしは注意をしたりしてやがて親子の関係が修復されていくようでした。年寄りばかりでなく近所や地域のつながりも親密で、小父さんや小母さんが間に入ってくれることがありました。ところが『核家族』化により、そのような『潤滑油』あるいは『クッション』になる『第三者』の存在が少なくなっています。しかし、やはり子育てには親子だけではなくて『第三者』の存在が必要だと思います。
 学校教育におきましても、先生が生徒に対して抱いている思いと、生徒諸君が学校の先生に持っている思いが必ずしも一致しているとは限らず、すれ違っている場合も多いのではないかと思っています。その時にその両者を良く知る『第三者』の存在があれば、学校の先生と生徒との信頼関係がより深いものになり、生徒諸君が学校の授業に集中できるようになるのではないかと考えています。
 家庭教育における『第三者』の存在を塾、特に個人塾が担えることは、これまでの保護者や生徒諸君との触れ合いの中で、『塾教育』の成果としてその実効性は確認できていました。私は学校教育においても個人塾の先生が『第三者』になり得る、むしろなった方がいいと考えています。学校の先生と塾の先生が、子供を教え育てるという原点に戻って力を合わせて指導に当たれば、きっと良い成果が期待できると考えています。ここにも『塾教育』の存在意義があると思うのです。
 昨年の5月からそれを試し確認できる機会を与えていただきました。5月には府立八尾高校、7月には金光八尾中学校・高等学校、9月には浪速中学校・高等学校の先生方に、また12月25日には八尾高校の1・2年生の生徒諸君対象に、それぞれ1時間から3時間の講演をする機会に恵まれました。特に八尾高校の生徒諸君が寄せてくれました感想文を読んでいますと、感激の至りです。私が予想していた以上に『塾教育』の成果が出たのではないかと考えています。学校の先生と生徒諸君がより深い信頼関係で包まれて、生徒は自信を持って授業に臨み、勉強に対する動機付けが出来たことが伺えます。原稿通りの話が出来たわけではありませんが、八尾高校生に講演した原稿と、彼らの感想文の一部を載せました。
 私の考えを実践し確かめる機会を与えていただけました、八尾高校の杉尾哲校長先生と八尾高校の先生方、金光八尾中学校・高等学校の本荘忠彦校長先生と栗山定幸副校長先生並びに金光八尾中学校・高等学校の先生方、浪速中学校・高等学校の木村智彦校長先生と宮教頭先生並びに浪速中学校・高等学校の先生方には、深く感謝申し上げます。
 
 
 八尾高校生を励ます
はじめに
 
 おはようございます。初めまして、私は須原秀和といいます。近鉄山本駅と高安駅の丁度真ん中あたりで、講師を雇わず妻と二人だけで小さな学習教室をしています。今年で34年目を迎えています。何故私がこのような席にいて、皆さんに話しかけているのか、不思議に思っていることでしょう。今年の八尾市の公立中学校で使われています『公民』の教科書には『学校応援団』の記載がありますが、実は杉尾校長先生から『八尾高校の応援団長』を頼まれまして、君たちを励ましに参りました。1・2年生対象の勉強合宿が行われるのは、120年近い八尾高校の歴史の中で君たちが初めての経験なのです。そのスタートに際し、しばらく私の話に耳を傾けて下さい。
 
 1 公立高校校長先生の大切な役割
 
 さて、校長先生の話が出ましたが、公立高校の校長先生の生徒諸君に対する最も大切な役割は何か、皆さんはご存知ですか?それは、大阪府教職員およそ6000人いる中から、如何に教育熱心で優秀な教師を自分の学校に引っ張ってくるかです。君たちが生まれて2歳か3歳の頃、八尾高校には野村利夫校長先生が赴任されました。4年間八尾高校の校長先生をなさり、その後8年間奈良学園の校長先生をなさったあと退職されました。私とは非常に懇意にしていただきました。野村先生は大変教育熱心で、またアイデアマンでもありました。塾長対象の説明会が同窓会館『ゆうかり』で開かれたのも野村先生の時からです。当時大阪の府立高校で初めて塾の先生対象の学校説明会をされたのは、馬路英和校長先生の天王寺高校と八尾高校だけだったと思います。その流れは現在の杉尾哲校長先生にも受け継がれていて、100年余りに及ぶ八尾高校の歴史と文化を大切にしつつも、八尾高校生の学習の実力をつけるために杉尾校長先生は全力を投球されています。この1・2年生勉強合宿もその一つです。杉尾校長先生の熱意は野村先生に勝るとも劣らないものです。そしてその結果、君たちが教えていただいている先生方の多くは、府立高校の先生方の中でもとびきり優秀な先生方の集まりなのです。君たちが八尾高校に合格できたことによって、そのような熱意のある先生方にご指導していただいていることを、先ずしっかりと自覚すべきです。
 
 更に同窓会が君たちを支えています。八尾高校が地域の教育機関として、長い間信頼を受けて今日に至っていることを考え、今後、より一層価値ある存在になり得るためには、創立120周年を迎えることを機に、同窓会として向こう10年間総額4000万円の支援をできるようにと取り組んでおられるとのことです。一部はすでに先行実施されていて、この勉強合宿もその一環なのです。このような支援を前面に押し出した取り組みは、同窓会始まって以来のことだそうです。先日お会いした同窓会副会長の小田博茂先生は『八尾高校が、公立高校としてかつての信頼に応えられるように懸命に支えていきたい』と熱く語っておられました。君たちは、脈々と続く八尾高校の歴史の中で、多くの先輩の方々からも支えていただいていることも知っておくべきだと思います。
 
2 八尾高校卒業生『悠二』君(浪人後神戸大学進学)の場合    
 
これから八尾高校で学んだ教え子と今学んでいる教え子について、具体的な話をしましょう。一人は神戸大学を来春卒業する悠二君です。3年生5月までバスケットボールクラブに所属し、あまり勉強はしていませんでした。彼のお父さんは高校受験の教材や出版を手掛けておられる会社の偉いさんで、私の教室にも毎年2~3度来られていました。恩智に住んでおられるという地理的な事情もあったとは思いますが、大阪府をはじめ近畿地方のたくさんの塾をよく知っておられるお父さんです。その方に自分の息子を須原先生に預けたいと頼みに来られたことは、私にとっては大変嬉しいことでした。しかし一方で、①私の教室では高校2年生からは原則としてはめったにお引き受けしないこと、まして悠二君は3年生になっているのです。②いくら悠二君が神戸大学に行くためにこれからは勉強を頑張ると口では言っても、現実はかなり厳しいこと、③上手く希望校に合格出来たとしてもそれは私にとっては当たり前のことで、もし合格できなかった場合、悠二君のお父さんに私は顔向けできないなぁという思いがあったこと等から、私は正直『困ったな』と思いました。しかし悠二君の決意は固く、『頑張る』と言い張りますのでその熱意に負けて、私は『速読英単語』をするならば、という条件を出して引き受けることにしました。    
 
 『速読英単語』はこれです。100語から250語位の英文が70個書かれてあります。これを徹底的に覚えていきます。暗記したものを書き写す『暗写』ということをします。まとまった英文を覚えると、どういう効果があるのか。覚えた単語や文章を忘れにくいのです。単語だけ単文だけを覚えていると、覚えやすいが忘れやすく、実際には入試にあまり役には立たないのです。そして何よりも英作力に違いが出ます。京大・阪大・神戸大などの英語の二次試験においては、長文読解では差がつかないのです。英作文で差がつくのです。  
 1年間は52週ありますが、中間試験や期末試験などの試験勉強のときは出来ませんので、およそ35~37週として毎週2つずつ英文を覚えても1年近くかかります。これを高校1年生で1回、高校2年生でもう1回きっちり覚えておくと、3年生になって受験を迎えても、もう英語は余裕です。英語の実力がなく、3年生になっても英語の課題や予習に追われているようでは他の科目の受験勉強は思うように手が回らず、国公立大学のトップ校に合格することは難しいでしょう。  
 本当にできるのかなと半信半疑でおりましたが、悠二君は8ヶ月足らずで『速単』を仕上げたのです。これはすごい!これなら神戸大学に行けるかもしれないぁ…、と私は思い始めました。この速読英単語をきちんと出来る生徒は、国公立大学か悪くても関関同立の大学に合格できる能力があると、私は思っています。英語1科目でしかもそんな本1冊でわかるのかと思われるかも知れませんが、わかるのです。『速読英単語』を1年以内に仕上げる能力のある生徒は、他の科目もできる能力を持っていると判断できるからです。私にとって『速読英単語』は生徒諸君が国公立大学に行けるかどうかの一つのバロメーターでもあるのです。悠二君は他の科目の準備が整わず、残念ながら浪人はしましたが、翌年念願の神戸大学工学部建築学科に合格したのです。もう一年早く始めていたら現役で合格できたのではないかと思います。君たちならば今から始めれば十分間に合います。
 
  もう一人、小学4年生から教えていて、現在2年生の生徒がいます。明日クラブの試合があるためにこの勉強合宿には参加しておりませんが、すでに『速読英単語』を一度終わり、今は2回目に入っていて、その英文を暗唱しているところです。この冬休みと3学期と春休みくらいで2回目が仕上がればと思っています。数学は青チャートの例題をB6の大きさの情報カードに問題を解き、あとで何度も繰り返し学習できるように、今その子は『実力の蓄え』を作っているところです。世の中には確かに優秀な子もいて、最後の3ヶ月かそれくらいで集中的に勉強して、スッと京大や阪大に合格していくような『離れ業』をやってのけるような子もいます。しかし、私も含めて多くの普通の子はそのような離れ業をすることはできません。我々がそのような優秀な子と同じ土俵で戦って、京大や阪大や神戸大に合格するためには、冬休みを挟んだセンター試験までの1ヶ月と、センター試験のリサーチが戻ってきてからの二次試験までの1ヶ月、この詰めの段階の最後の2ヶ月をどう過ごすかにあります。最後の2ヶ月を文字通り2ヶ月で終わらせてしまうのではなくて、時間の余裕のある時に『実力の蓄え』を作っておき、何度も繰り返しその『実力の蓄え』を見直して、実質半年分以上の価値ある2ヶ月にすることが出来れば、合格できるのです。3年生が始まる春休みまでにできる限り『実力の蓄え』を作り、3年生になれば折に触れてそれを反復学習し、最後の2ヶ月で5回くらいは見直せば、センター試験は良い成績でクリア出来て、2次の志望校受験に道が開かれるのです。国公立大学はセンター試験次第なのです。やればできます。
 
 ここで少し余談になりますが、カード式数学学習法についてお話します。『教室だより』第125号に触れていることなのですが、灘高等学校に塩崎勝彦先生という方がおられました。灘高校生からは数学の神様のように思われている先生です。3・4年前に定年を機に、灘高校では非常勤講師になられ、同時に私立興国高校の進学特別顧問に就かれて、ここでも数学の指導をされるようになりました。興国高校の塾長対象の説明会の折、副校長先生から塩崎先生を紹介され、たまたま持参されておられました先生の『数学カード』を見せていただきました。私が教え子に勧めている勉強方法と全く同じで、自分の指導方法が認められた思いがして感激したことをよく覚えています。杉尾校長先生の口癖ではありませんが『良いものはいい』のです。興国高校からここ2・3年、数こそ少ないけれど、関西医科大学や大阪薬科大学といった私立大学の他に、一橋大学や神戸大学や京都大学の国立大学の合格者が出ていますし、東大を目指している子もいるのです。塩崎先生の存在が大きいものと私は考えていますが、興国高校生のやる気も大したものです。興国高校は6年間一貫教育の学校ではありません。君たち八尾高校と同じ3年間の高校生活の学校です。君たちも本気でカード式数学例題演習に取り組めば、更に素晴らしい結果を出せるのではありませんか。あれこれ手広くやるのではなくて、これ一冊に集中して何度も繰り返しやることが合格への近道なのです。    
 
 定期試験の成績が悪い時に、学校の先生としてはその部分を補習して生徒の実力をつけさせてやりたいと思われる気持ちはわからないわけではありません。そのような『授業内容定着型補習』は一般的にどこの学校でも行われていることです。しかし私はそのような補習よりは、むしろ『年間計画型補習』の方が大学進学のことを考えた時、成果が上がると思っています。半年なり1年なり、毎週この補習に参加したら最後にはこれだけの『実力の蓄え』、例えば数学例題カードが出来上がるとか速読英単語が仕上がるとか、そのような補習を私は『年間計画型補習』と言っています。君たちは先生方にお願いして、これをやっていただいた方がいいのではありませんか。
 3 『王様の剣』の話
 
 さて、君たちはディズニーのアニメで『王様の剣』というのを知っていますか?円卓の騎士で有名なアーサー王の少年時代のエピソードを描いたものです。当時、国は乱れそれを嘆いた神様がロンドンの街に天から剣を落とし、その剣は石にささりました。その剣を石から抜くことが出来た者がこの国を治めるにふさわしい国王であると、金文字で剣には書かれてありました。国中の力自慢が剣を抜きに来ますが誰も抜くことが出来ませんので、やがてその剣のことは忘れられていきます。その国には痩せっぽちで小さな少年アーサーがいました。まわりからはワートとよばれ、12歳くらいのみなし子でした。あるお城で下働きをし、城主の息子で力は強いが馬鹿な若者の世話をしていたのですが、ワートはふとしたことから魔法使いのお爺さんマーリンに森で出会います。ワートを未来の王様と予言していたマーリンによって、魚や鳥あるいはリスに姿を変えてもらって海の世界や空の世界を冒険し、様々な経験を通して生きるための勇気と知恵と愛をワートは学んでいきます。ある時、その国で武芸を競う大会があり、そのバカ息子のお供で試合会場に出向きますが、大切な彼の剣を持って来るのを忘れます。大目玉を食らい、すぐに剣を調達するように命ぜられて町中を探すのですが、偶然見つけたのが石にささっていた剣でした。何も考えず躊躇なくそれを抜きとって息子の元に持って行きます。さあ大変!みんながその剣は『王様の剣』だと気付きます。こんな痩せっぽちに抜けるはずがない。何かの間違いだろう。もう一度抜くところを見ようじゃないか、と試合はそっちのけで石のところに人々が集まります。もう一度剣を石にさしてからそのバカ息子が力いっぱい引き抜こうとしますが、びくともしません。アーサーがやるといとも簡単に抜けるのです。人々は彼こそが神の言われる王様に違いないと認め、今まで偉そうにやっていたバカ息子も彼の前にひざまずくのです。
 
 この話は何を言おうとしているのでしょうか。国のリーダーとなる者は武芸や腕力だけではなく、見聞を広め、知識と知恵を身につけ、人格を磨かなければならないことを示しているのです。魔法使いマーリンは『知識こそが魔法の鍵だ』と言いたかったのです。そしてそれはまさしく、現代の世界では『何のために勉強するのか』を表現しているのです。日本では『エリート』という言葉は、勉強は出来るが身勝手で心の冷たい人間を表すとして、マイナスのイメージが強いです。しかし、本来そのような人間はエリートでもなんでもないのです。単に記憶力が良いか情報処理能力に優れているだけの人間です。『真のエリート』とはグローバルな世界のリーダーとして、専門的知識を持ち、自分の頭で考え、自分で正しい判断が出来、その判断と行動に自分で責任が取れる人間、そして他人の心の痛みがわかる人間のことを言うのです。人的資源に乏しい日本は言うまでもなく、今世界に求められているのは『真のエリート』なのです。八尾高校120年に近い歴史は、そういった人材を生み出すために努力されてきたはずです。君たちはその歴史と文化に身を置く八尾高校生なのです。その自信と誇りと責任を自覚して欲しいと思います。
 
 4 『学校の授業』と『自分の勉強』の大切さ=具体的な学習の進め方
 
 では具体的にどのように学習を進めていけばいいのでしょうか。それは『学校の授業』と『自分の勉強』を大切にすることです。このことは須原英数教室の教育指導理念でもありますが、この言葉に尽きると考えています。よく『塾の勉強さえしっかり受けておれば、学校の授業や成績は気にすることはない』という言葉を耳にしますが、これは間違っていると思います。私の経験では、授業中居眠りをしたり内職をしたりして『学校の授業』を大切にしない子は、たいてい自分が思うほど実力は付かず、従って第1希望の大学にも合格はできていないと思います。仮に首尾よく希望の大学に進学できたとしても、自分でテーマを見つけ
て進めていく大学の講義では、学力を伸ばすことは難しいでしょう。
 『学校の授業』を大切にするとは、ただおとなしく授業を聞いていることではありません。例えば数学を例にとりますと、先生が黒板に式を書いておられる時に『そうそう、そこから先は多分このような式を書くはずだ。やっぱりなぁ…。参考書の例題にのっていた通りだ。何ならその先は先生に変わって今日は僕が指導しようか?』とか『あれ!先生は違った式を書いているぞ。これは別解だなぁ。やっぱり先生はよく知っているんだなぁ…。これはメモしておこう。』といったように、実際に授業中先生と直接会話をしているわけではないけれども、心の中で先生と数学の会話のキャッチボールしているような授業の受け方をすべきなのです。それが授業に参加しているという意味です。自分にとってはその授業が復習レベルに当たり、知識の確認になっていることが大切です。もう高校生なのだから自分にとってわからないところをわかるようにできればいいのです。そのための授業にすべきなのです。受動的な授業の参加ではなく能動的・積極的な授業への参加を心掛けるべきです。
 
 『学校の授業』を大切にできるためには、もう一つの『自分の勉強』も大切にしてしっかり授業の準備をしておかなければなりません。言いかえれば、それは『実力の蓄え』を作りこれを反復学習することです。例えばこれも数学を例にとりますと、この冬休みは次の3学期に学ぶ範囲をこのようなB6の無地のカードに問題を書き、裏にその問題を解いて行くのです。チャートでもフォーカスゴールドでも参考書は何でも構いません。しかも例題だけでいいのです。練習問題をする必要はありません。3学期が始まれば折に触れてカードに目を通せば、先程話したように授業の中で先生と心の会話が出来るし、自分にとっては知識の確認としての授業になり得るのです。長期休暇は次の学期の蓄えを作っておく恰好の『自分の勉強』の場でもあるのです。数学1科目だけでも余裕を持つことが出来れば、クラブ活動や生徒会活動あるいは文化祭活動などに時間を取られていても、勉強に不安を覚えることはなくなります。勉強とクラブ活動などを両立させながら国公立大学を目指すことが出来るのです。将来大学で数学を研究しようと考えている生徒諸君や、数学が得意な生徒諸君にはお勧めできる勉強方法ではありませんが、数学のあまり得意でない子あるいは苦手な子は、数Ⅰ・A例題300題、数Ⅱ・B例題300題、合計600題をカードにして、繰り返し繰り返しやれば、センター試験で80%の160点以上は取れます。数学の好きな生徒なら90%の180点以上取れます。もちろん二次試験にも対応できます。これまでの経験から、私が保証します。誤解があったらいけませんので、念のために言っておきますが、私の話はすべて二次試験を念頭に置いたものです。ただ、センター試験の成績結果で志望校が決定される現実があるから、センター試験の話をしているだけです。
 
 それでは私が保証できる根拠を皆さんに示しましょう。一つは私の教室の進学実績です。宣伝するつもりは毛頭ありません。確かに秀才型の優秀な生徒も何人かはいましたが、私の教え子たちの80%から90%は僕や君たちと同じ努力家たちです。初めて大学受験生を送り出した16年前から記録し始めて、今年の春までの大学進学実績は(合格実績ではありませんよ)、居候諸君128名の内(高校2年生9月から費用をいただいていませんので、そのように親しみをこめて呼んでいますが…)東大3名・京大6名・阪大12名・名古屋大学と九州大学は各1名で北大と東北大を除く旧帝国大学に23名=約20%が進学しています。これに神戸大学6名や地方の国立大学を加えますと47名になります。更に公立大学の大阪市立大学9名などを加えますと、国公立大学にはおよそ半分の61名が進学しています。慶応・早稲田・関関同立と言った、いわゆる難関私立大学を含めますと80%前後の進学実績になります。更には、その中に東大・京大などの医学部に1割に当たる13名が進学しているのです。大阪市立大学の場合は、9名の内5名が医学部に進学し、内2名は首席合格でした。自慢たらしく聞こえたらごめんなさい。自慢ではないのです。先程話をした君たちの先輩の悠二君のように、君たちと同じ普通の子たちが、きちんと勉強すれば道は開けると言いたいのです。現に医学部に進んだ13名の内、親が医者であるのはたった2名で、11名は普通の家庭の子たちです。実は岡山の県北で無医村の医師をしていた僕の無二の親友がいました。大重宗比古君と言います。彼は38度の熱が出ていても、真夜中に一つ山越え二つ山越えて車で往診に行くという、使命感に燃えた医者でした。過労がたたったのか47歳の若さで急死しました。金儲けではなく、病気で困っておられる患者さんのためになる医者こそ必要なんだ、と時々教え子にそのような話をするから医学部や薬学部を目指す生徒が多いのではないかと思います。ほとんどの子がクラブ活動や文化祭活動などをこなしながら、中には2つもクラブ活動をやりながら、自分の希望校に進んでいる子も何人かいるのです。
 
 もう一つ、私が保証できる根拠をお見せしましょう。スライドを用意していますので見て下さい。これはある私立高校の塾長対象の説明会でいただいた資料です。今月上旬この高校に出向きまして、皆さんに見せることのお許しを得ています。男女共学にされて6年になりますが、その6年間の統計資料です。この学校は塾長対象の説明会において配布される資料が豊富で、しかもその学校にとってはつらいことでも正直に出しておられますので私は毎年出かけます。私には一つ経験的な持論があります。それは『中学入試の駸々堂模擬テストで偏差値50点以上の子や、高校入試で五ツ木模擬テスト偏差値60点以上の子は大阪大学や神戸大学に合格できる能力がある』ということです。誤解してはいけませんよ。全員が行けると言っているわけではありません。きちんと勉強して努力した者は大阪大学や神戸大学合格が非常に有望だと言っているのです。それを裏付けてくれているのがこの学校の統計資料なのです。
 文理学科が出来て2年になりますが、私の考えでは高津高校や生野高校の文理学科を残念ながら落ちて後期八尾高校に入学した子、偏差値で言えば63点以上の子はおよそ1割前後いるはずです。すなわち30人くらいはいるはずです。偏差値60点以上の生徒諸君は約3分の1の100名以上いるはずです。偏差値57点以上の成績で入学している子は80%近くいると思います。
 資料を見て下さい。黒い線で囲ったり、合計人数を書いているのは私が手を加えた部分です。八尾高校と大変よく似た偏差値レベルです。勉強だけをやっている高校ではありませんよ。クラブ活動も非常に熱心です。偏差値57点から63点まで、四角に囲った範囲の合格者合計を見て下さい。八尾高校で言えば、成績通知票のランク2から8くらいの生徒諸君でしょう。名古屋大学1人、京都大学2人、大阪大学7人、神戸大学15人、大阪市立大学6人、大阪府立大学18人合計51人の『現役』合格者がいるのです。239名中51人ですよ!これは21.3%です。八尾高校のランク2から8までの生徒は、320人×0.7ですから224名です。ランク1の生徒を除いても、まだ約50人はそれらの大学に現役合格できる可能性があると考えられるでしょう?現に柔道部にいたランク7の子が、今年大阪大学外国語学部に現役合格したではありませんか。自信を持って下さい。やればできます。
 5 八尾高校生としての自信とプライドを持つ=高い志の実現に向けて
 
 冒頭でも触れましたが、120年近い歴史の中で、1・2年生対象に勉強合宿をすることは八尾高校始まって以来のことです。先生方にはそれだけ君たちに対する期待があり、熱が入っているのです。しかもその学習内容は自由で『自学自習』を中心とするものらしいですね。実はこれは素晴らしい勉強方法なのです。なぜならば、それは京都大学の教育基本理念であって、私の教室はそれを手本としてずっとやって来て、『自学自習』の良さがよくわかっているから、そう言えるのです。少し難しい話をすれば、グラッサーという心理学者の『選択理論』の実践ともいえます。グラッサーは人間の行動を決めているのは外的要因ではなく、内的要因である自分たち自身の選択によるものだという考え方です。この考え方に基づいた教育こそ『上質の教育』だと言われていて、アメリカではかなりの実践的成果が出ているようです。『何をやっても自由』という学習方法は一見楽なように見えますが、実は最もハイレベルで難しい勉強方法なのです。なぜならば『何をやっていいのかわからない』レベルの生徒には役に立たない勉強方法だからです。表面的には同じ勉強をやっていても、強制的に受身でやっている勉強つまり『やらされている勉強』と、そうではなくて自分がこれをしようと思って取り組んでいる『自主的な勉強』とは中味は全く違うのです。心の持ち方が違うから、自主的な勉強はすればするほど実力が身について、気がつけば思ってもいなかったハイレベルな大学に合格できるようになっているのです。私の教え子はほとんどがそういう子たちです。
 
 勉強合宿は今日と明日の2日間です。たった二日と考えるのではなくて、まるまる二日あれば『何かできる』と考えて、『私はこれをやろう!』と取り組めばいいのです。それをきっかけにこの冬休み、正月3日間くらいは勉強のことを忘れて思い切り遊んでもいいけど、『1週間あるいは10日でこれを仕上げるぞ!』といったメリハリのある集中した勉強をすべきです。さっき話した数学の参考書の例題演習でもいいし、英文法の問題集でもいいのです。何を勉強していいのかわからない生徒は、先生に相談に行けばいいのです。しかし、相談をしても決断を下すのは君たち自身です。君たち自身の勉強だからです。
 
 10年ほど前に、高安中学校から天王寺高校に進学した生徒がいました。入学して最初のホームルームの時間に、担任の先生から『今から東京か京都か決めなさい!』と突然言われて、僕の教え子はわけがわからず質問したそうです。『東京か京都かって、どういうことですか?』すると先生は『おまえはアホか!東京大学か京都大学かに決まっているやろ!今ここで目標を決めろって言ってんねんや!』そこで私はその教え子に、君はどう答えたのかと聞きました。すると彼は『へぇ~、僕でも京都大学に行けるのか…と思って、じゃあ京都大学にします、と言いました。』というのです。この子は高安中学校で3年間、天王寺高校でも3年間ラグビーをやり、1年浪人はしましたが京都大学農学部に進学し、そこでも4年間ラグビー部に所属し、副キャプテンまで務めました。入学時の早い段階で、高い志を生徒に持たせるという天王寺高校のやり方は実にうまいと思います。真似をするわけではありませんが、君たちも京都か大阪か神戸か、今決めなさい。今からでも遅くはありません。八尾高校生の君たちならば、京都大学や大阪大学・大阪市立大学・大阪府立大学・大阪教育大学そして神戸大学といった大学に進学できる能力は十分にあるのです。あとは努力です。クラブ活動をやっていてもいい、生徒会活動をやっていてもいい、文化祭活動をやっていてもいい、その他の活動をやっていてもいいのです。しかし勉強もそれ以上にやりなさい。君たち学生の本分は勉強だからです。勉強と両立できてこそ、八尾高校が目指す文武両道が成り立ち、骨太の人格者が出来上がるのだと思います。やればできます。八尾高校生としての自信とプライドを持ち、高い志を実現してくれることを願っています。私も八尾高校の応援団長としてできる限りの協力はします。君たちも頑張りなさい!私の話を聞いてもらって、どうもありがとう!
 
 勉強合宿 実施後アンケート(記述回答)
1)須原先生の講演を聴いて、感想・意見・質問、あるいは新たな決意等、何でもいいですから書いて下さい。
 
1年生
 
*八尾高に入ったことを誇りに思った。私も上を目指して頑張っていこうと思った。先生が紹介していたZ会の速読英単語や数学カードはやってみようと思った。八尾高は、先生やPTA、同窓会、地域の人などいろいろな人に支えられていてこんないい環境で勉強できているからもっと勉強しようと思った。
 
*須原先生の講演は、高校に入ってから聞いた大人の話の中で一番心に響いたし良かった。熱がこもっているのがうれしかったし、学校の先生の中にもこんな人がいてほしいなと思った。自分は今まで塾に行ったことないけど、須原さんの塾なら入ってみたいなと思った。
 
*須原先生の講演を聞いてからとても勉強する気が出てきました。これからも八尾高校に来てもらって勉強するのに役立つような情報や参考書を教えてもらいたいです。須原先生がおっしゃったことを家に帰ってからやりたいと思います。
 
*講演を聞いてとてもすばらしいと思ったし、自分にも可能性があるんだなあと思った。本当にあの講演は熱意がこもっていて心に響いた。もっと努力して勉強しないといけないと思った。
                                    
*塾はいいものだなっと思った。
 
*正直言って普段聞いている講演などはとても眠たくなったりするけど、須原先生のおっしゃっていることは自分のためになることばかりで、いつもの講演とは違うなと思いました。
 
*もうあかんなーってあきらめてたけど、今からでもできると分かってがんばろうと思った。すごくいい経験になった。
 
*努力すれば天才にも勝てることが分かってうれしかった。
 
*すごく熱が入っていて政治家の演説みたいで、よほどその部分は大事だと感じた。
 
*須原先生のお話を聞けて良かったです。私は秋まで成績が伸びなかったのですが、12月のテストでぐーんと伸びました。このままもっと頑張っていこうと思っているところに先生の話を聞けたので、やればもっと成績が上がるのかと思いました。先生が「八尾高生の君たちならできる!」そう言ってましたよね。本当に頑張ろうと思いました。なんて表現すればいいか分からないんですが、かっこいいなと思いました。頑張ります。
 
*須原先生は何かわからんけど人間的にすごいなあと思った。自分でもできるんかなと思えた。数学のカード式やってみようか迷ってます。本当に話を聞けて良かった。ありがとうございました。
 
*先生の話を聞いてとても勇気がでました。君たちはできるんだと言ってくださった時、私も今から一生懸命頑張ったらいい大学を目指せるのだと思いました。そして色々なデータを見せてくださったり、昔の教え子の話をしてくださったり、根拠ある話をされて、とてもやる気が出ました。
 
*教育のことについてとても熱心で、世の中の先生みんなが須原先生のような情熱を持った先生だったら良いのになと思った。自分ではできないと思っていても、やる気があればできないことはないんじゃないかと思った。
 
 
2年生
 
*話の中で言っていた数学のカードを作ってする勉強法はやってみたいなあと思いました。勉強は誰かにやらされるものではなく、結局は自分に厳しくするしかないんだなあとあらためて感じました。
 
*個人の塾なのに東大や京大などの合格者を何人も出しているのはすごいと思ったし、  夫婦二人だけで教えていることもすごいと思いました。私は数学も英語もとても苦手で勉強方法が分からなかったので、須原先生のおっしゃってた速読英単語を書店で見てみよう思うし、チャート式などの問題集をカードに書こうと思います。須原先生の話はとても分かりやすくて楽しくて、聞いていて勉強もっと頑張ろう頑張れると思いました。いい体験ができました。
 
*須原先生のお話を聞いている最中に突然思ったことは、今まで無理だろうと思い、あこがれではあるがあきらめの気持ちで忘れかけていた大学を、目指してみようかということである。なぜその大学名が出てきて、そこに行きたいと思ったのか分からない。須原先生の生徒への眼差しとか暖かさを感じて、大学の先にある自分の人生を良い方向に進めていきたい、と人生について考えたからだろうか。
 
*もう少し早く聞いて始めれば良かったなあと思うことが多かった。あれだけ八尾高校のことを大切に思ってくれている人がいることは嬉しかった。今からでもできることはあると思うからから始める。
 
*須原先生の話を聞いて、今からでも遅くない!今から真剣に勉強したら行きたいところに行けるってホンマに思った。数学のあのカードはすごかった。めっちゃキッチリ書けてて分かりやすいなあって思った。自分は塾いったことないから、どんなんが普通なんか分からんけど、スゴイねんなって思った。
 
 
 2)勉強合宿を終えて、感想・意見・新たな決意等について書いて下さい。
 
1年生
 
*最初はすごく嫌でした。でもやっていくうちに集中できたし、勉強がはかどりました。久しぶりにこんなに勉強した気がします。勉強合宿に参加できて良かったです。
 
*自分にあった勉強ができたと思えました。はじめは参加するのが嫌だったけど、参加して良かったと思いました。ありがとうございました。
 
*自習の時間は集中できる空間があって良かった。講習では予習する大事さが分かったし、勉強合宿を終えて達成感を味わえたのでとてもいい経験になった。こんなに長時間勉強したのは中学時代の受験勉強以来のことだ。
 
 
*家ではこんなにも勉強することは、冬休み中はなかったと思うし、宿題も結構終わったから良かった。ご飯の時のティラミスとかスープとか豚汁美味しかった。ただ、夜11時まで勉強というのはキツイし眠たくなった。お風呂がセミナーだけでは少なく思った。これからも頑張ろうと思う。
 
2年生
 
*想像していたよりもとても集中できて、講習も早朝は受けたことがあったけど、夜に受けたことがなかったので、少し眠かったけど新鮮だったし、とても良い経験になりました。犬飼先生の豚汁も、澤田先生のティラミスも、校長先生のスープもとても美味しかったです。ありがとうございました。また機会があれば実施してほしいと思います。楽しかったです。ありがとうございました。
 
*とてもつらかった。一日中勉強していると頭が痛くなった。でもこんな体験はなかなかできることではないし、友達と一緒だから頑張ることができたと思う。なのでこの合宿に来て良かったと思う。これからも勉強を頑張らなきゃという気持ちにさせてもらった。
 
*冬休みの課題をしようと思っていても手をつけられずにいたが、この勉強合宿のおかげでだいぶ課題が進んだ。卒業生のセミナーで、段階7だった先輩が現役で大阪大学に受かったり、八尾高生で京都大学に現役合格したと聞いて、自分も先輩方みたいに頑張ろうと思った。話を聞いて行きたいという気持ちを全面に出して頑張れば行きたい大学に行けるんだなあと思った。そんなかっこいい先輩方を目指して新学期は生まれ変わって学校の授業を大切にしていきたい。
 
*集中して勉強することができて良かった。集中をそぐネットや漫画のない環境で、一日中勉強することができたので、案外普段は「ないと無理!」と言っているものがなくても生きていけるもんなんだなと思った。一度やって少しなれた気がするので、家でも集中できると思う。ただ、合宿中は時間がきっちりと決められていたので、今やっていることを途中でやめないといけなかったのが不完全燃焼な感じがした。また機会があったら参加したいです。先生の豚汁美味しかったです。
 
  以上すべて生徒諸君の原文通りです。
 
 60名の定員に65名が参加した1・2年生対象の勉強合宿でした。終了後二つのアンケートに全員が応えてくれています。ここに紹介していますのはそのごく一部で三分の一にもなりません。自分が通っている八尾高校に誇りを持った子、『学校の授業』を大切にしようと思った子、大学進学に向けて勇気と自信を持ち出した子、『自分の勉強』に対してやる気を起こした子、そして何よりもアンケート(2)の2年生最初の生徒が書いていますように(同じ内容の記述が沢山ありました)学校の先生と生徒諸君との距離が身近なものになり、より深い信頼関係が結ばれたことなど、嬉しい感想文で一杯でした。私は感激しました。
 照れくさくはありますが、少し手前味噌なことを言わせていただければ、この三十数年間教え子の指導において積み上げてきた実績と経験があったからこそ、八尾高校生の心を動かすことが出来たのではないかと思っています。ただそれが、想像以上の手ごたえがあったことに驚いています。八尾高校の生徒諸君!ありがとう。頑張ろうね!
 『八尾高校生を励ます』講演をやらせていただけて、これまでの自分の考えを実証・確認できる機会を与えて下さったことに対して、杉尾校長先生はじめ八尾高校の先生方・同窓会の方々に、私は心から感謝しています。ありがとうございました。
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