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「今解き教室」について

朝日新聞『今解き教室』

 私の教室では従来から国語の指導に力を入れています。日本語を理解し、日本語で考え、日本語で表現できる力、いわゆる国語力は『5科目の要』だと考えているからです。国語を真面目に勉強している子は、日常生活においても思慮深くなり、反抗期を迎えても簡単に『キレる』ことも少ないように感じます。更に、高校受験や大学受験における小論文を書く時に力を発揮するだけではなく、大学や大学院で学ぶ際にもその論理的思考力がきっと役に立つ場面があるだろう思います。PISA型教育を充実させようと思うならば、国語力を養成することです。
 しかし、この読解力・思考力・表現力は中々身につけるのが難しく、成果が目立って目に見えるものではありません。多くの塾がその必要性を認識していても、漢字や語句の練習で終わっているのはそのためです。また、中々良い教材がないのも確かです。そのような折、妻のきよみが『これいいんじゃない!』と『今解き教室』の記事を見つけ、インターネットで詳しく内容を把握して、早速朝日新聞社に申込をいたしました。ところが、『今解き教室』は学校・大手塾対象で、50人からの契約とのこと、何度か責任者の村上さんに直接お電話をして交渉し、ようやく10人からの契約で使えることになりました。
本社ビル内にて村上剛さんと記念撮影
4月22日(日)、『学習塾百年の歴史』出版報告会で上京した時、宿泊したホテルの目の前に朝日新聞本社がありました。機会があれば無理を聞いていただいたお礼などを申したいと思っていましたので、翌朝アポイントもないのにお邪魔しました。突然の訪問にも関わらず、ジュースをごちそうになりながら、『今解き教室』についての意見交換等をさせていただきました。詳しくは妻が以下に書いてくれていますが、『今解き教室』は私の知る限り最高の国語教材だと考えています。『学校では、校長先生がやる気でも、負担が大きいと言って中々一般教員の方で採用してもらえないんです』と村上さんが言われるように、指導者の指導力を試す教材でもあると思います。『関西では今解き教室を使っていただいている個人塾は須原先生のところだけです』とも話しておられました。小学4年生から大学受験生まで、国語の指導はすべて妻が引き受けてくれています。『国語教室』は私の教室の特徴を成す大きな柱の一つです。3年目を迎えた『今解き教室』の指導について、経験に基づく妻の感想をお読みいただければ幸いです。
『今解き教室』との出会いは2年半余り前、朝日新聞紙上の小さなお知らせコラムを目にした時でした。『これは画期的な教材!』と直感し、ぜひ使ってみたいと思いましたが、学校・大手塾を対象にしているとのこと。私どものような個人塾でも何とか使わせてもらえないものかと主人が直接朝日新聞本社の村上氏にお願いしたのが始まりです。
 1年目は10名以上の申込条件をクリアするために希望者を募り、小6と中1生合同でようやく10名を集めてのスタートでした。急きょ月2回、2時間ずつの特別時間割を作って、テキストはL2(当時は小学4・5年生対象のL1・小学6年から中学2年を対象としたL2の2種のみ)使用しました。2年目以降は何名からでも申込可能となったのですが、結果的には公立中3生7名私立中3生4名の計11名で、従来からの『国語教室』の時間に組み入れて行いました。テキストはL3(L3はこの年度だけの製作でしたが、記述問題が豊富でとても良いものでした)を使用し、高校入試対策の一環としても役に立ちました。3年目となる今年は8名で、同じく中3の『国語教室』の教材として使っていますが、残念ながらL3はなくなったため代わりに新たに作られたL2発展編を使用しています。 
 朝日新聞社による『今解き教室』の紹介として「朝日新聞に掲載した記事や写真、図表などを活用して、現代社会が抱える問題について考える新しい総合教材…中略…将来社会で求められる『生きる力』を身に付けることができる」とあります。その意図にどこまで近づけているかわかりませんが、発行当初から実際に使ってみての感想をいくつか述べてみたいと思います。
 先ず『今解き教室』の他教材との決定的な違いは、『現在の社会』の様々な事象が、歴史的な背景や未来への展望も含めて、わかりやすく解説されている点にあります。上記紹介文にあるように、実際に掲載された写真や記事など新聞の特性を活かした教材だと思います。『自然・環境』『生活・社会』『政治・経済』『科学・技術』という4つのジャンルから毎月一つ、例えば『地球温暖化』『日米関係』『宇宙開発』『少子高齢化』『裁判員裁判制度』など今現在の多様なテーマが取り上げられています。その中には『ゴミの分別』『インフルエンザ対策』『食卓のマグロ』など生徒たちの身近な話題も沢山あり、自身の現実の問題として向き合うことになります。こうして生徒たちは現在の社会の姿を学ぶことによって、他ならぬ自分の問題としてとらえる能動的姿勢を身につけ、興味・関心の幅を多方面へ広げることにつながっていく、と感じます。これは生徒のみならず私自身も実感するところで、授業準備のためにテキストを読んでいて、『こんな見方もあるのだな』とか『最近よく耳にするがこういうことだったのか…』などと学ぶことも多く、毎回新しい発見を楽しみにしています。授業の場でも、私の経験などを織りませながら生徒と一緒に読み解いていくように心掛けています。
 そして、こうした特徴を支えているものの一つがデータの豊富さです。テキストには様々な形態の図表・グラフ・統計等の資料が数多く掲載されています。右図のようなわかりやすい図解・それに続く詳しい解説に加えて、豊富なデータ類がより理解を深めてくれます。また、現代社会では日常生活においても様々なデータ処理能力が求められます。そのため授業においても、データの正しい読み取りができるように特に留意しています。
 さらに、身近な話題から始まり、地域社会⇒日本⇒世界へと視点を移し、データを世界地図上で図示して世界と日本の関わり合いに目を向けるコーナーもあります。テキスト全体を通して世界的な広い視野が重視されている点も見逃せません。これは今後更なるグローバルな世界を生きてゆく子ども達にとって欠くことのできない視点です。こうした教材を通して、世界に目を向ける態度が根付いていくことは大きな意味を持つと思います。その他、新聞記事を読むことで語彙力・読解力がつく点、要点をまとめたり、自分の考えを述べたりする作文力がつく点など利点は数多くあります。
 先日お会いした村上氏が、お話の中で『今年の東京の某中高一貫公立校の入試問題に「都市鉱山」についての作文が出題され、「今解き」で学んでいた生徒が、模擬テストの結果からは合格が危ぶまれていたにもかかわらず見事合格した』とおっしゃられていましたが、私も『なるほど、十分考えられることだなぁ』と納得しておりました。話をお伺いしながら、私の教室の生徒がもし同じ立場ならばきっとしっかり書けていただろうと生徒たちの顔を思い浮かべていました。現に昨年度、積極的に学習に取り組んでいた生徒は国語力・作文力がぐんとアップしました。その中でも天王寺高校文理学科に合格した富井択音君は回を重ねるごとによく論点を把握できるようになり、数多くの300字前後の記述をきちんとやりこなすことで大いに実力をつけてくれました。とても嬉しいことでした。
 さて、一方、生徒たちの応用力のなさを痛感する場面にも度々出くわします。言うまでもなく、一つの事象には教科で言えば、社会的・理科的・数学的側面が存在します。そのため『今解き教室』の問題は科目横断的なものが多いのですが、理科的・社会的分野に関しては割合スムーズに対応できるのに、数学(算数)が関わってくると様子が一変します。
数学力なくして今日の経済学が成り立たないのと同様に、様々な事象を正しく捉える上で数学的な物の考え方は不可欠です。『今解き教室』ではデータから読み取った数字を比較して関連を考えたり、割合や比を使って社会の動きをとらえたり、と各所に計算問題が組み込まれています。扱う数字自体は単純で計算式も平易なものばかりなので、単に計算問題として出題されれば難なく解けるのに、記事中の文章やデータから題意に合う必要な数字を読み取って自分で計算式を立てて……となると、これが中々出来ないのです。『教科の知識』が『実生活』と結びついていない良い例だと言えます。PISAの試験で結果が思わしくないこともうなずけるのです。
 以前からもこうした傾向が懸念され、そのため『総合的学習』が注目されてきました。最近では大学においても、文系・理系の枠を外した学部・学科・授業が行われつつあることも周知のことです。『ゆとり教育』の下で行われた『総合的学習の時間』は、方向性は良かったものの余りにも準備不足のスタートでした。ほとんどの学校では適当にお茶を濁しただけの実りのないものに終わった、というのが現実です。
 けれども前号第125号教室だより『PISA型教育への警鐘』でも触れていますように、『ゆとり教育』のあの時期に『今解き教室』のような素晴らしい教材があれば、現場の先生方にとっても、生徒たちにとっても、どんなに有益であったろうと思うと残念でなりません。今からでも学校現場に取り入れて欲しいものだと思います。
 『今解き教室』は中身の濃いテキストに加えて電子教材までを合わせると、かなりの量になります。中3生対象といえども、月2回1回1時間半ずつの限られた時間では到底全てをこなすことはできません。そこで、生徒諸君には事前にしっかり読んで問題をやっておいてもらい、授業においては『これだけは』というポイントを中心にして解説を加え、問題をピックアップして一緒に考えてゆく、という方法をとっています。このような指導を可能にしているのは、日頃から『自分の勉強』を大切にする態度が生徒諸君に身についているからこそだと自負しています。こうして共に学ぶ中で、前述したように、興味や関心の幅を広げ、問題に対する能動的姿勢を身につけ、世界的な広い視野を持った生徒に育つための一助を荷うことが出来ればと願っています。
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